2004年度 日本史学演習(海老澤衷先生ゼミ) 活動記録


2004年度新入生歓迎旅行・尾道浄土寺にて

年間の演習テーマ:伊予国弓削島荘の研究

【2004年度ゼミの概要】
 2004年度の海老澤ゼミでは、東寺領伊予国弓削島荘関連史料の輪読を行った。テキストは『日本塩業大系 史料編 古代・中世(一)』及び『日本塩業大系 史料編 古代・中世(一)補遺』を使用し、報告者は担当文書(10通前後)の校訂と、その中の1文書についての解釈と考察を行った。

【各回の担当者と注目文書・論点】

第1回(5月10日・加藤 裕美子)
 仁安2年(1167)2月25日 弓削島荘住人等解(塩11)
 住人等解の外題に花押を据える人物について
第2回(5月24日・大澤 泉)
 治承3年(1179)8月22日 官宣旨(塩13)
 女房別当三位家領の伝領と藤原綱子について
第3回(5月31日・山本 隆太郎)
 延応元年(1239)12月日 宣陽門院庁寄進状(塩23)
 藤原邦綱について 〜九条兼実との関係を中心に
第4回(6月7日・加藤 麻彩子)
 文応元年(1260)7月11日 東寺十六口供僧下文案(塩37)
 荘務権をめぐる東寺供僧と菩提院の争い
第5回(6月14日・田中 奈保)
 文永6年(1269)11月4日 守清請文案(塩補9-1)
 年貢未進と債務/文永6年内検の意義
第6回(6月21日・山本 真紗美)
 文永7年(1270)8月21日 法橋乗実申状(塩48)
 法橋乗実の弓削島荘・新勅旨田預所職要求と東寺供僧
第7回(6月28日・中島 昌治)
 年月日未詳 弓削島荘百姓延永申状(塩60)
 弓削島荘年貢塩における大俵について/弓削島荘における桑の用途について
第8回(7月5日・田村 仁)
 建治2年(1276)4月23日 東寺十八口供僧方円信奉書案(塩76)
 建治年間の一連の網問題ならびに弓削島荘の網漁
第9回(7月12日・工藤 知裕)
 年月日未詳 東寺十八口供僧使者申詞案(塩80)
 梶取男について
第10回(9月27日・工藤 知裕)
 同上
第11回(10月4日・加藤 麻彩子)
 建治2年(1276)6月25日 東寺十八口供僧連署申状案(塩89)
 御室と菩提院、東寺供僧の関係についての小考
第12回(10月18日・大澤 泉)
 年未詳3月10日 真行房定宴書状(塩98)  弓削島荘と定宴 〜定宴書状の背景〜
第13回(10月25日・加藤 裕美子)
 弘安8年(1285)2月15日 東寺十八口供僧年行事法印房瑜書状案(塩102)
 役夫工米賦課にみる弓削島荘と長講堂との関わりについて
第14回(11月1日・山本 真紗美)
 正応2年(1289)12月15日 大和国平野殿荘預所宗憲申状(塩111)
 平野殿荘をめぐる東寺供僧と仁和寺菩提院
第15回(11月8日・田村 仁)
 永仁元年(1293)12月16日 定厳書状(塩123)
 執奏
第16回(11月15日・田中 奈保)
 永仁4年(1296)5月18日 関東下知状(塩132)
 永仁裁許再考
第17回(11月29日・中島 昌治)
 永仁4年(1296)10月日 東寺十八口供僧申状案(塩135)
 六波羅探題の両使について(塩134・塩136)
第18回(12月6日・堀 祥岳)
 乾元2年(1303)閏4月23日 関東下知状(塩143)
 まとめ 〜今後の課題〜(下地中分に関連して)
第19回(12月13日・清水 亮)
 嘉元4年(1306)9月 東寺一八口供僧評定事書(塩148)
 加治木頼平と法橋栄実
第20回(1月17日・宮崎 肇)
 (徳治3年カ・1308) 東寺十八口供僧定厳申状土代(塩159)
 永観文庫所蔵「東寺長者補任」紙背文書について
第21回(1月24日・加藤 裕美子)
 年間総括

※詳しくは『アジア地域文化エンハンシング研究センター報告集V 2004年度』「研究活動報告(水稲文化研究所)」の「1.3大学院授業における研究」参照のこと


【成果と課題】

 今年度は延慶年間までの約200通を扱った。弓削島荘の関連文書はテキストとした『日本塩業大系』の他にも『愛媛県史』や『鎌倉遺文』などでも翻刻がされているが、改めて校訂をすることで翻刻の修正を行うことができた。また無年号文書の年次比定、『日本塩業大系』脱漏文書の指摘、断簡となっている文書を復元なども、今年度のゼミにおける成果と言える。

取り上げられた主なテーマとしては、
 @宣陽門院による東寺寄進以前の伝領過程と背景(第2回)
 A弓削島荘をはじめとする東寺供僧料所の荘務権をめぐる、東寺供僧と菩提院の対立(第4回・第6回・第11回・第14回)
 B荘官層の役割(第12回・第19回)
 C弓削島荘における相論と幕府訴訟制度との関係(第15回・第16回・第17回・第18回)
 D検注・俵・桑・網などといった弓削島荘現地の様相(第5回・第7回・第8回)
などが挙げられる。

論点を通して課題として浮かび上がってきたのが、
 @東寺寄進後における本家との関係について
 A供僧組織・下級寺官層の実態とその活動について
 B「預所」と「雑掌」の関係
などである。

また今年度は弓削島荘の特徴とも言える流通については、ほとんど論点に挙がることがなかった。さらに文書名についても、検討を加えまた統一していく必要がある。来年度も引き続き弓削島荘関連史料を扱っていくが、以上の点に留意しつつ取り組んでいきたい。


【ゼミ合宿・行事】

4月26日    修士課程入学者の卒論報告
5月15〜17日 新入生歓迎合宿(広島県立歴史博物館・弓削島・尾道等の見学)
9月6〜8日  夏季報告会(軽井沢セミナーハウス)
12月20日   冬季報告会
3月23〜24日 春季報告会
                                    (ゼミ幹事 加藤 裕美子)   


2004年9月8日 軽井沢セミナーハウスにて

 

 

 


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